ワンパンマンのシーズン2第9話から。
キングが、自分は強くなりすぎたと悩むサイタマに対してヒーローの心得を説くしょうもない演説シーンです。
サイタマの相槌的なセリフは割愛しています。
なお、このシーン、吹き替え版はかなりかっこつけた英語になっていて(多分)、個人的に気に入ったものをかっこ書きで併記しています。
【原作シーン】
やれやれ。
退屈だと言って何も行動せず、刺激を求める割には挑戦しない。
そんな時期が俺にもあったなあ。
いいかい、サイタマ氏。
人生はあてのない旅だ。
新しい景色を見るためには自分で道を切り開くしかないんだ。
サイタマ氏は強くなっただけで目的地にたどり着いたと勘違いしているだけなんじゃないかな。
ヒーローとして進む道って、そんなに簡単にゴールできるものじゃないと思うんだ。
戦いの中に充実感を得ようとするのは本質的に間違っている。
勇気を強く持ち、誰かのために行動してこそ、ヒーローの存在意義があるのではないか。
その点で言うと、サイタマ氏はまだ最高のヒーローにはなれていない。
つまり、そこに理想を追求する課題、ひいてはヒーローとしての伸びしろが多く残されているのではないだろうか。
だとすると、もう自分は成長しきったなどと言うセリフは、浅はかで傲慢な発言だと思えてくる。
最高のヒーローに必要なものは何か。
ゆるぎない正義や戦う力、困難に立ち向かう勇気、
その答えを見つけ出すまでは、退屈している暇などないはずだ。
少なくとも俺はそう思う。
漫画にもそう書いてあったし。
【英語字幕&吹き替え】
Good Grief.
You say you’re bored, but you refuse to do anything.
You seek stimulation, you refuse to challenge yourself.
I was like that in the past, too.
(There was a time I felt that way too)
Listen up, Saitama.
Life is a journey to nowhere
In order to see something new, you need to open up that path yourself.
(If you wand a change of scenery, you need to get there your own way)
I think you’ve mistaken being strong with reaching your destination.
(You think being strong means you’ve reached your destination)
I don’t think the endgame for a hero is that simple.
(I doubt the path to becoming hero comes to an end with such a cut and dried finish line )
Seeking satisfaction from fighting is fundamentally wrong.
(It’s inherently wrong to go into a fight seeking satisfaction from fight itself)
Being courageous and taking action for the sake of others should be what truly gives a hero their meaning.
In that respect, you are still not the ultimate hero, Saitama.
Which means much remains for you in the pursuit of your highest ideals.
It also means saying you have no more room to grow is just shallow and arrogant, don’t you think?
(To say that you’ve already reached the limit of your growth, that starts to sound shallow and arrogant now, doesn’t it? )
What does the ultimate hero need.
(What does it actually take to be the ultimate hero)
An unwavering sense of justice, the power to fight and the courage to face all obstacles…
Until you can find the true answer to the question, you don’t have time to say you’re board.
At least that’s what I think.
(Those are my thoughts on it anyway)
I also read that in a manga.
【解説】
1. やれやれ。
Good Grief.
2. 退屈だと言って何も行動せず、
You say you’re bored, but you refuse to do anything.
こういう時に、you don’t do anything ではなくrefuseとか入れないといけないのは、言われればわかるけど、パッと出てこないんだよなあ。
3. 刺激を求める割には挑戦しない。
You seek stimulation, you refuse to challenge yourself.
Seekは”探す”というか”追い求める”で、幸福とか自由とか成功を追い求めるなんてときに使う。
日本語だと「いつも自分はチャレンジしている」なんて言ってもなんとなく通じてしまうけど、英語の場合challengeだけだと「何に?」となってしまう。
そして、「成長しようとしている」という意味での「チャレンジ」はChallenge oneself(自分に挑戦する)という表現になる。
4. そんな時期が俺にもあったなあ。
I was like that in the past, too.
直訳「おれも昔はそんなだったよ。」
これ、個人的には吹き替え版のThere was a time I felt that way tooの方が、感じ出てていい気がします。
まさに「そんな風に感じてた時期が俺にもあったなあ」ですね。
5. いいかい、サイタマ氏
Listen up, Saitama.
6. 人生はあてのない旅だ。
Life is a journey to nowhere
これ、Life is an endless journeyとしている字幕もあったけど、終わりのない旅というは少し変な気がするし、なんかダサい気がする。というか、Journey to nowhereがかっこいい。
7. 新しい景色を見るためには自分で道を切り開くしかないんだ。
In order to see something new, you need to open up that path yourself.
(If you wand a change of scenery, you need to get there your own way)
字幕は教科書みたいなシンプルな英語。
Open upで切り開くの意味で、こういう場合にはupをつけるのが普通なんだろうけど、なくても通じるんじゃないかな、たぶん。
直訳「何か新しいものも見るためには、そのための道を自分で切り開く必要がある。」
吹き替えの場合は、ある意味セリフに忠実なんでしょうが、このget thereは出てこないな。ただ、find で何の問題もないと思われる。
8. サイタマ氏は強くなっただけで目的地にたどり着いたと勘違いしているだけなんじゃないかな。
I think you’ve mistaken being strong with reaching your destination.
(You think being strong means you’ve reached your destination)
これ元のセリフは「強くなった」と「たどり着いた」で、過去と言うか完了なんですが、あっさり動名詞で処理していて。それでいいんだよなと思います。
直訳「私が思うに、君は、目的につくことを強くなることだと勘違いしている」
吹き替えの方は忠実というかより正確で、Being strong(強いこと)で、you’ve reached your destination(目的についた)と思っている(のだろうけど・・・)としている。
9. ヒーローとして進む道って、そんなに簡単にゴールできるものじゃないと思うんだ。
I don’t think the endgame for a hero is that simple.
(I doubt the path to becoming hero comes to an end with such a cut and dried finish line )
このendgameは出てこないな。ゲームの終わりではなく(それはGame end)、ゲームなどの終盤戦・最終局面のこと。
直訳「ヒーローの最終局面というのはそんな単純なものだとはおもはない」
吹き替え版の方はかっこいいですね。
come toは素直に近づくでいい気がします。cut and driedは「ありきたりな」、finish lineは決勝線で、陸上競技とかのゴールラインのこと。
これ凝り過ぎじゃないの?
つまり、I doubt the path to becoming hero comes to an end with such a cut and dried finish line は、
直訳「私は、ヒーローになる過程が、そんなありきたりなゴールラインの結末に向かうものとは思えない」
10. 戦いの中に充実感を得ようとするのは本質的に間違っている。
Seeking satisfaction from fighting is fundamentally wrong.
(It’s inherently wrong to go into a fight seeking satisfaction from fight itself)
これも、字幕の方は非常にプレーンですね。
直訳「戦いに満足を求めることは根本的に間違っている」
これに対して吹き替えの方は凝った言い回しにしている気がします。
Inherentlyは”本質的に”の意味で、fundamentallyと何が違うのかと言われると、正に日本語の「根本的」と「本質的」の違いだと思います。
It’s inherently wrong to go into a fight seeking satisfaction from fight itself
直訳「戦いそれ自身から満足を得ようと戦いに向かうことは本質的に間違っている」
11. 勇気を強く持ち、誰かのために行動してこそ、ヒーローの存在意義があるのではないか。
Being courageous and taking action for the sake of others should be what truly gives a hero their meaning.
for the sake of othersで「他の人々のために」。
should be whatがかっこいいというか、自分はでてこないな、この言い回し。
基本的には、「~だと思う」なんだけど「~じゃなくちゃいけないんだ」という含みが込められているからshould。
直訳「勇気をもち、他の人々のために行動することこそが、ヒーローに意味を与えることである(そうじゃなくちゃいけない)」
12.その点で言うと、サイタマ氏はまだ最高のヒーローにはなれていない。
In that respect, you are still not the ultimate hero, Saitama.
直訳「この点において、君はまだ最高のヒーローではない、サイタマ」
You are not A yetより、肯定文にして、you are still “not A”とするのは便利です。
13.つまり、そこに理想を追求する課題、ひいてはヒーローとしての伸びしろが多く残されているのではないだろうか。
Which means much remains for you in the pursuit of your highest ideals.
Which means は「つまり」とか「すなわち」といった言い換え。
直訳「つまり、君の高い理想を追求するなかには、多くのことが残されている」
14. だとすると、もう自分は成長しきったなどと言うセリフは、浅はかで傲慢な発言だと思えてくる。
It also means saying you have no more room to grow is just shallow and arrogant, don’t you think?
(To say that you’ve already reached the limit of your growth, that starts to sound shallow and arrogant now, doesn’t it? )
It also means は「~とも意味する」が直訳なので、「言い換えれば」とか「つまり」。roomは部屋→スペース→余地。
直訳「つまり、自分にはもう成長する余地がないなんていうのは浅はかで傲慢だ、そう思わないか?」
吹き替えの方の、starts to saoundは、これ、一般的な言い方なんだろうか。
直訳すると、「聞こえはじめる」ですが、元のセリフの「思えてくる」(「思う」ではなく)のニュアンスを出そうとしているのでしょうかね。
視点を変えると違って見え始めてくる、というニュアンスがあって、かっこいい気がします。
15. 最高のヒーローに必要なものは何か。
What does the ultimate hero need.
(What does it actually take to be the ultimate hero)
字幕の方は簡単ですが、これだと日本人が訳したかのような簡単すぎる気もします。ネイティブの人、こんな言い方するのかな。
直訳「最高のヒーローは何を必要とするのか」
その点、吹き替えの方が自然の気がしますね。
What it takes to AでAに「必要な資質・才能」と言った意味。
鬼滅の刃の24話のリハビリシーンで苦痛を全く感じない善逸に対して、伊之助が「あいつやるぜ」と言ったときの字幕はHe has what it takes.
16. ゆるぎない正義や戦う力、困難に立ち向かう勇気、
An unwavering sense of justice, the power to fight and the courage to face all obstacles…
waverは「心が揺れ動く」という意味の動詞で、unwaveringで「揺るがない」の意味。
17. その答えを見つけ出すまでは、退屈している暇などないはずだ。
Until you can find the true answer to the question, you don’t have time to say you’re board.
この場合、別の字幕ではcanが省略されていたので、あってもなくもいいんだと思います。
日本語だと、「見つけられるようになるまで」なんて言うから、becomeを噛ませようとしたり、時制をこじらせそうですが、単にuntil you can findでいいんでしょうね。
18. 少なくとも俺はそう思う。
At least that’s what I think.
(Those are my thoughts on it anyway)
19.漫画にもそう書いてあったし。
I also read that in a manga.